先に結果を言います。負けました。
前回の記事で予告した「手作り唐揚げと冷凍唐揚げ、どっちが安いのか」対決。調理師を22年やった私が本気で計算して、冷凍唐揚げに値段で負けました。
でも、負けた理由を数字で見ていくと、「冷凍唐揚げってすごい」と「それでも家で揚げたい日がある」の両方が見えてきたんです。
今日はその報告です。

対決のルール
計算のルールは前回の記事と同じです。(計算方法の詳しい話はこちら → 自炊の1食っていくら? 元調理師が計算ルールを決めた)
- 材料費は「実際に買った値段 × 使った分」
- 迷ったら多めに見積もる
- 数字は隠さない
正直に書いておきます。今回、冷凍唐揚げは半額の429円で買いました(定価は858円)。鶏肉も値引きシールが貼られた365円です(元の値段は457円)。
「安く買えた日どうしの対決」ということになりますが、スーパーの唐揚げ売り場と鶏肉売り場、値引きの波はだいたい同じように来るので、条件は五分と考えます。
選手入場
【赤コーナー】冷めてもおいしい、お弁当おかずの定番!!
冷凍:味の素「ザ★から揚げ」225g入り
スーパーの冷凍食品コーナーの実力者。レンジで5分、揚げ油いらず。

【青コーナー】唐揚げの定番、「もも肉選手」!!値引きシールを引っさげての参戦です!!
手作り:奥州ハーブ鶏の唐揚げ
岩手県産のブランド鶏もも肉253g。衣は日本食研の唐揚げ粉。作るのは調理師歴22年の私です。

冷凍唐揚げの原価
- 本体:429円(定価858円の半額で購入)
- レンジ5分の電気代:3円
合計 432円(225g)= 100gあたり192円
手作り唐揚げの原価
- 鶏もも肉:457円 − 値引き92円 = 365円(253g)
- 唐揚げ粉:1袋213円の1/4使用 = 53円
- 揚げ油:300cc = 139円
- ガス代:揚げ物15分 = 25円
(揚げ油は特売の1000g462円のキャノーラ油。鍋に入れた全量を計上しています。実際は揚げたあとも油は残るので、こして使い回せばもっと安くなりますが、「多めに見積もる」がルールなので全額入れました)
合計 582円
揚げ上がりの唐揚げを量ったら255gでした。

ちなみに生肉は253g。揚げると肉は縮むのに、衣がついた分でほぼ同じ重さに戻りました。店の原価計算でもこの「歩留まり」は大事な数字です。
手作り = 100gあたり228円
結果発表
- 冷凍:100gあたり192円
- 手作り:100gあたり228円
冷凍の勝ち。100gあたり36円差です。
しかも思い出してください。私は鶏肉を値引きで買ってこの結果です。定価の457円で買っていたら100gあたり264円。完敗です。
22年原価計算をやってきた身として言います。工場で一度に何トンも揚げて、全国に配る。この規模の勝負に、家庭の台所が値段で勝てるわけがないんです。プロの店だって、仕入れ値では冷凍食品に勝てません。
元調理師の言い訳を聞いてください
ここからは負けた側の言い分です。
実は今回、揚げていて冷や汗をかきました。
調理師時代はフライヤーで揚げていました。業務用のフライヤーは油がたっぷり入っていて、温度を設定すれば勝手に一定に保ってくれます。
ところが今日は家庭の鍋に油300cc。鶏肉を入れた瞬間、油の温度が一気に下がりました。そして少ない油は、適温に戻るまでに時間がかかるんです。その間、衣はじわじわ油を吸っていきます。
※油を増やすと原価が上がってしまうので、最小限にした——それが今回の失敗でした。
フライヤーはダイヤルで温度を決められるうえに、油の量がたっぷりあるので、肉を入れたくらいでは温度が下がらない。あの環境がどれだけ恵まれていたか、家の台所で思い知りました。
22年揚げ物をやってきた人間が、家の台所では苦戦する。少ない油で揚げるのは、それくらい難しいことなんです。
だから、家で唐揚げがベチャッとしても、あなたの腕のせいじゃありません。道具の差です。
そして冷凍唐揚げは、工場の完璧な環境でプロ以上の温度管理で揚げられています。100gあたり192円であの仕上がり。冷凍唐揚げは、まじめにすごい商品です。
それでも家で揚げるなら「二度揚げ」です
負けっぱなしも悔しいので、店でやっていた方法をひとつ置いていきます。
【1回目】170度で、8割方まで火を通す
【2回目】いったん取り出してから、180度でもう一度サッと揚げる
これで中までしっかり火が通って、衣はサクサク、油切れも完璧です。
温度が下がりやすい少ない油でも、二度に分ければ立て直しが効きます。1回で仕上げようとするから、生焼けが怖くて揚げすぎて、固くなるんです。
味の審判
肝心の味です。
正直に言うと、どちらもおいしかった。そのうえで判定すれば——同点。いや、僅差で手作りのリードです。
ただしこれ、私の腕の勝利ではありません。勝たせてくれたのは「肉」です。
白状したとおり、今日の揚げ方には課題がありました。味付けだって市販の唐揚げ粉ですから、威張れたものではありません。
それでも、冷凍していない生の肉を揚げる。これが大きいんです。かじったときの肉のふっくら感とジューシーさは、生の肉から揚げたほうがはっきり上でした。
揚げ方が多少怪しくても、素材の力が帳消しにしてくれる。22年厨房に立って、最後にたどり着く結論はいつも同じです。料理は素材なんです。
リベンジしたい気持ちは、あります
今回、味付けは市販の唐揚げ粉に任せました。それでも生の肉の力で冷凍を上回れたのだから、22年の配合で下味を付けたら、差はもっと広げられるはず——という気持ちはあります。
ただ、先に白状しておきます。味でどれだけ勝っても、コスパではもう勝てません。
今日やってみてわかったとおり、少ない油では温度が安定しない。安定させるには油を増やすしかなくて、油を増やせば原価はさらに上がる。
つまり、コスパで選ぶなら冷凍唐揚げ。これはもう、ひっくり返らないんです。
※調理時間、値段、後片付け。どれをとってもかないません……
私の結論はこうです。
- 普段の日、疲れた日 → 冷凍唐揚げ。迷わず頼っていい
- 時間と気持ちに余裕がある日 → 家で揚げる。「揚げたて」と「自分の味」は、値段のつかないごちそうです
半額の冷凍唐揚げは家計の味方。これは元調理師のお墨付きです。
まとめ
- 冷凍唐揚げ(半額429円):100gあたり192円
- 手作り唐揚げ(値引き肉使用):100gあたり228円
- 値段は冷凍の勝ち。味は同点か、僅差で手作りのリード
- 味の差を作ったのは腕ではなく「生の肉」。素材の力は大きい
- 油を増やさないと温度が安定しないので、コスパでは冷凍に勝てない
「自炊のほうが安い」は、唐揚げには当てはまりませんでした。数えてみないと、わからないものですね。
いつか自分の下味でリベンジする日が来たら、また正直に数字ごと報告します。

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